ディシディアこまごま






*1

「どうしたんだセシル、考え事か?」
「フリオニールか。・・・いや、なんでもないんだ」

フリオが声を掛けた彼は、暗黒騎士のまま俯き加減で歩き続けている。
例の兄弟話か。しかしクリスタルをその兄の導きで手に入れたというが。
なんでもない、の回答に満足できるフリオではない。なおも「なんでもないはずはないだろ」と言い募る。
セシルはちょっと躊躇していたようだが、やがて大きく首を振った。そして懐から何かの紙を取り出した・・・。

「フリオニール・・・この人について思うことを自由に言ってくれ」
「そうだな、服着ろ、だな」
「ああそれを言うのはここじゃ君で9人目だ」

彼の手の紙には半裸の男がいた。アナザーセフィロスなんて目じゃない。風呂上りレベル。
たしかに9人に聞いたら9人が「服着ろ」というだろう。色々と大変だ。
しかしそれはそうと何故セシルがこれを手に悩んでいるのか。
無言の問をかけるフリオニールの視線から逃れるようにセシルが遠くを見つめた。そして語りだす。

「一人目は、僕だ。会った瞬間言ってやったことだけを覚えているよ・・・服着ろよ!ってね」
「結構度胸あるんだなセシル・・・って、会った?知り合いか?」

セシルはその紙をまた慎重な手つきで懐にしまっている、それをフリオはただ見ていた。
暗黒の兜が彼の顔を覆い隠しているので表情が見えない。だが微妙な声音・・・嫌いな人間ではないようだが。
セシルがそこで一息つく。そして何故かパラディンに唐突に変化した。

「僕の兄さんですが」
「なっ・・・!!兄だって?!」

そして何故パラディンになる。思わずフリオニールの声も高まる、

つまりセシルには半裸の血が流れているのか!
「突っ込むところはそこじゃないよフリオニール」
「二人とも何騒いでるッスか?」
騒いでない!!
「ああ、主にフリオニールが」

そこで登場したのがティーダ。後方で索敵を任されていたが何も来ないのに辟易したようだ、
勝手に盛り上がっているフリオニールを他所にセシルはまた暗黒騎士に戻ると、
また懐から例の紙を取り出した。そっちの鎧にしまってるんです。

「ティーダ、この人について一言どうぞ」
「服着ろって感じッスね」
「君でコスモス全制覇だ」
「9人ってそういうことか!」

そういうことだった。いつの間にか全員話題共通する仲に。しかし・・・兄?
そこでフリオとティーダがゆっくりセシルを見る・・・彼は二人の視線の中、またパラディンになり、

「つまりゴルベーザだ」
鎧の下はこんな薄着だったのか!!
ええっ!!そうなんッスか!?
・・・な、兄さん、そうだったのか・・・!!
「そんな訳ないだろ・・・」

そして三人まとめてクラウドのブレイバーでぶっ飛ばされたという。唯一のツッコミ役。





*2

ジタンが一団の真ん中辺りで歩いていると、何処からともなく薄幸二人組みがやってきた。
薄幸二人組み?セシルとティナのことである。
彼らはちょっと互いに顔を見合すと、ジタンに歩調を合わせ、彼の両隣についた。
「ジタン」
最初に口を開いたのはセシルだ。珍しくパラディンの姿で前を向いている。
身長差が大きい故にジタンは自然彼を見上げる形になる。
その表情は固い。何を言われるのか予測は難しく、ジタンは首を捻った。おれ何かしたっけ?
「・・・ねぇ、ちょっと考えてほしいの」
「考える?何を?」
次いでティナ。やや躊躇している語り口に首を180度回らせて彼女を見れば
やはり不安げな顔をしている。不安?
「なんだよ、二人とも。なんか頼みごと?」
「ああ・・・そうだ。君が受けてくれれば嬉しいんだが」
「内容によるな」
「M-1にね、出たいの」
「・・・は?」
ジタンは足を止めた。M-1。M-1グランプリ。
世界中からお笑いの猛者たちが頂点を極めようと、
血で血を洗う闘争が繰り広げられるという恐ろしい大会。半分くらい大嘘。
まさかそんな単語が彼女の口から出たとは信じがたく、彼はオウム返しに問い返す。
M−1?そう、M−1。ティナは答えた。やはりM−1だ。
「チーム名はもう決まってるの」
「お早いご決定で」
「人外ズ」
人外ズ?!
「だって僕らのなかで人外なのはこの3人じゃないか」
「えっ、いや!それ理由じゃないし!だって、じゃねえだろ!」
「ちなみにね、セシルがボケで私はツッコミ」
「色々いいてえけど、とりあえずおれは?」
「ボケ。」
ボケ?!?
私達三人なら、結構いいところまでいけると思うんだ、と彼女は言う。
確かに自分は人外だ。しっぽあるし。セシルは半宇宙人、ティナは半幻獣。
しかしそれ以前になんでM−1を目指すんだ。いつの間にお笑い戦士に。
そしてティナツッコミって無理あるだろ、おれボケってそれ、あと人外ズはどうかと!
そこまでジタンがまくし立てた所で再び二人が顔を見合わせた。
で、手を打った。パチン、と。
「なるほど、じゃ、ジンガイズ、カタカナ表記で」
「そうだね、確かにそっちの方がいいよね。さすがジタンだわ」
そこじゃねええええ!!!
「よし、じゃあライトさんに休暇願いを出しにいこうか」
そんで今行くのかよ!!
そしてジタンはセシルにズルズル引きずられていった。
で、結局三人でライトに怒られたっていう。今行くなよ、と。ジタンの指摘はやっぱり正しかった。





*3

バッツは既に成人だと、確か以前本人から聞いたことがある。
何故か自信満々なしたり顔で胸を叩きつつ、「だからどーんと甘えて来い!」とかも言っていた記憶がある。何故甘えることになる。そして現状はどうだ。
「スコール、狙ったボケにセシルが突っ込んでくれずに、あまつさえボケ倒された。おれはもう漫才師失格だ・・・!」
(アイツに突っ込みを求めたのか。そしてお前はいつ漫才師になったんだ)
「しかもツッコミだと思ってたジタンまでもさらにボケてた」
(それはもう諦めるような状況たったんだろうな、ツッコミを)
「それで最後にオニオンが綺麗に締めてた。くそー、羨ましいぜ!」
(そして着地地点はそこか)
スコールは一人悔しがるバッツを前に一つため息をついた。彼はバッツのように思ったことをぽいぽい言う性格ではない。思いを内側で潰していくこの性格に感謝したことも幾度となくあった、だが今はただそれが疎ましい。
(ストレスが溜まる・・・)
「んで、ティナがそれにウケて、クラウドは無視!そこでまたツッコミ返してくれてもいいよなーまったく!こうなったら次はスコールが締めてくれよ!間違いなくビシっといくだろ?で、そのときおれが・・・」
「なんでやねん」
溢れた思いがバッツの胸を打った。手をビシっとやったスコールは無表情のまま。まさかのワイパーツッコミ。
そして非常事態に彼がぽかーんとしている間に、スコールは歩を進めた。もう構ってられない。無駄にイライラが溜まる。いっそのことビシッと逐一つっこんでいけばむしろ楽しいだろうに?心中でそんな小声が聞こえたような気がした。スコールは大きく首を振った。そんな訳ない。無視無視、彼は声に出して小さく呟いた。後ろからのバッツの呼び声も・・・
「あっ、違ったか?スコールボケだった?」
「・・・なんでやねん
無視無視。そう唱える小声は、結構楽しそうじゃないか、とのバッツの言葉にかききえた。





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